2012年09月18日

美しいこと

 普段、BL小説は読まないのですが友人に勧められて
 木原音瀬さん『美しいこと』(上)(下)を読みました。
 
   

 会社員の松岡洋介は女子社員に人気のあるどこにでもいる営業マン。
 彼は憂さ晴らしから金曜日の夜になると女装をして街中を闊歩していた。
 そんなある日、女装をしていることがバレ、
 ホテルから逃げてきたところを冴えない男に助けられる。
 その男は同じ会社の総務に勤める寛末基文。
 松岡の同僚から使えない奴と散々扱き下ろされていた男だった。
 だが、松岡は寛末と接していくうち、徐々に彼の何気ない優しさに惹かれて行く。
 しかし、松岡は男として会うのではなく、初めて出逢った女装姿の『江藤葉子』として彼に会っていた。
 寛末は江藤葉子の美しさ、芯の強さに惹かれて行くのだが
 その後それが松岡だとわかり、からかわれていたと思い彼を拒絶する。

 寛末は美しい女性『江藤葉子』に心を奪われ、彼女をモノにするため今まで以上に努力をしてきた。
 だがそれは、松岡という男が作り上げた幻想だった。
 そして、松岡は男の自分を好きだという。からかわれていると思った。だから拒絶した。
 なのに、どうしても彼が気になる。それがどういう気持ちなのか自分では説明できない。
 その気持ちを松岡に尋ねるが、今度は彼から拒絶されてしまう。
 ところが、そんな時松岡の同僚で仲のいい葉山が出向先にいた寛末と付き合うことになった。
 それを聞いた松岡の心中は穏やかではない。だが、もう自分には関係のないことだと思っていた。
 そして、葉山は松岡に藤本という女性を紹介してきた。男性不信の彼女は二人きり出会うことを拒み
 何度か4人で会う機会があるのだが、松岡はそれが嫌でたまらなかった。
 自分を振った寛末に会わなくてはいけないからだ。
 寛末の鈍感なところや気の利かなさに腹を立ててはいても、やはり寛末が気になった。
 
 それから、寛末が松岡の帰りを駅で待つようになったことがきっかけで付き合うようになる。
 寛末はそれがとても楽しかったのだが、『江藤葉子』と過ごしていた時のような
 ときめきがあるわけではなかった。このまま男友達として付き合っていけたら。
 淡い期待を持っていたのだが、松岡は自分に好意を持っている。
 そして、寛末の曖昧な感情の答えを待っているのだ。
 だが、寛末にリストラの宣告があり再び二人の関係が崩れていく。
 

 さて・・・紹介していただいた友人には大変申し訳ないのですが
 一度目に読んだときは、この本のよさが全くわからなかったのです。
 だってね、松岡くんはなんであんな気も利かない、鈍感な男のどこがいいの?
 ちっとも共感できなかったのですよ。
 それに、あちきが今まで読んでいたBLコミックには全くない要素が沢山あって
 読むのにとても時間がかかりました。
 でも、きっと何かあると思って、それから何度も読み返しました。

 寛末さんの嫌な部分が見えるたびに、本を閉じたくなったけど
 そんな彼でも、自分の気持ちときちんと向き合い
 最後には松岡を愛おしいと思っていく過程が丁寧に描かれていたのだとわかりました。
 そして、葉山さんの結婚式で必死に松岡くんに会いたいと訴え、一度は拒絶され
 コンビニの前で飲んだくれているところに松岡くんが現れたとき泣けましたよ。
 二人が男友達?として食事を一緒にしたり映画を見に行ったり
 何より、温泉旅行は本当に楽しそうでここに来てやっと想いが通じたと思ったのに
 その後の寛末さんのプライドが二人を駄目にしてしまっていた。
 そこでまた、あちきの心が折れるわけですよ。またですか・・・って。
 最後は本当に素敵なカップルになってくれて、本当に良かったよ。

 これからは、好き嫌いせずに、いろんな作品読もうと思いました。

 ちなみに・・・この作品のイラストは日高ショーコさん。
 上下巻が左右逆なのはわざとです。作品を手にとってこの様に置き
 ちゃんと手がつながれるように置いてみて下さいね。
   


Posted by ちんぷい at 14:41Comments(1)木原 音瀬